August 15, 2005

明日の記憶

「明日の記憶」(荻原浩)を読んだ。
「白愁のとき」(夏樹静子)よりも現実的で後味がいい。
主人公の仕事は共にクリエーティブで、
家族構成、生活程度も同じぐらい。
夏樹さんの方が病を得てからと対比させる意味でか、
少しエリート。

「明日の記憶」の主人公と周りの人とのかかわりが自然で
身につまされつつ読んでいったが、ラストが素晴らしい。

アルツハイマーがテーマの小説でこんな終わり方はうれしい。

この作品は映画化されると聞いていたので早速検索
これならぴったりのキャストかもしれない。
いい映画に仕上がるといいな。

頭の中にもやがかかっているような状態と何回も出てきて、
私の頭の中も大分もやっているので少し心配になった。
それが病的なものか、加齢によるものか、境目がわからないからね。

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July 17, 2005

魂萌え !(桐野夏生)

「白愁のとき」の次の日は桐野夏生さんの「魂萌え !」
読みました。
本を読むのは昔ほどではないが、速いのです。

この本は文庫になるのが待てずマーケットプレイス利用です。
本屋で平積みされている派手な装丁と腰巻の文字、
はっきり言って引いてしまいました。

主人公は59歳、出版社/著者からの内容紹介に

「これから先は喪失との戦いなのだ。友人、知人、体力、知力、金、尊厳。
数えだしたらキリがないほど、自分はいろんなものを失うことだろう。
老いて得るものがあるとしたら、それは何なのか、知りたいものだ」(本文より)
たったひとりで、老いと孤独に向き合うことを決意する主人公。
世間と格闘しながら、変貌を遂げていく敏子の姿は、読む者に大きな希望を与えてくれる。
私たちが生きる、ささやかで儚い日常という世界を舞台に、著者の新たな代表作が誕生した。

これは読むしかないでしょう。
期待して読んで、・・・・・・ちょっと違った。
不思議なお婆さんが登場するあたりとその周辺は
とても面白いけれど、現実に主人公と似たような経験をした友人もいるし、
夫を亡くされたかたの切実なblog等読ませていただいていると
フィクションはノン・フィクションには叶わないと思ってしまう。

私は桐野夏生さんは、短編が上手な方だと思う。
「錆びる心」を表題とする短編集はうまいし怖いのでお勧めだし、
ファンタジーのような不思議な味のある「玉蘭」も面白かった。

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白愁のとき(夏樹静子)

52歳という働き盛りの造園設計家・恵門潤一郎を突然襲った「アルツハイマー病」
それは、ゆるやかに、確実に、心と体を冒してゆく。
男の絶望と救済を、精妙な叙情あふれる筆致で描いて、新境地を拓く長編小説。
                              (出版社/著者からの内容紹介)

夏樹静子さん御自身の心因性の腰痛と戦った「椅子が怖い」
「心療内科を訪ねて」-心が痛み、心が治すを読んでいたので
この方が書いた若年性アルツハイマーを扱った小説を是非読みたいと思った。
もっと前に角川から文庫化されていたが、私の買ったのは新潮社版。

読み終えて、何か違うと思った。

勿論しっかりとした裏づけがある訳で、最後に参考文献が列記してある。
主人公が「これからどう生きようか?それとも死んでしまおうか」と
揺れる気持ちが描かれるが、救済の一つが、最後かもしれない
と始めた不倫。もう一つは幼馴染に依頼された町おこしの公園。

男の救済は不倫なの?
病気について克明なだけにこの設定が不快だ。
苦しいとすぐ愛人のもとに逃げていく。
夫なり父親なりの病気で悩んでいる家族は置き去りなの?
小説としても失礼じゃないの。

実際にアルツハイマーになった人や家族の記録を読むと、
こんな浮ついた救済なんて求めていないよ。
みんな必死に本人と家族が一体になって、より良い方向に向かって
進んで行こうとしている。

本の紹介に苦しんだ末にたどり着いた救いとあったので
何か悟りのようなものを想像していただけに、これじゃ参考にもならない。
私の読み方が間違っているのかもしれないけれど。

ミステリーではない夏樹静子さんの本(こちらはお勧めです)

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